A : 『いい犬取り去る「羊ウマ」、見栄立つウルトラ牛姉』

B : 何それ?

A : 便利なおまじないさ。

B : はぁ? エイちゃん、また変なこと考えてるね。

A : 聞きたい?

B : 聞きたくなくても言っちゃうでしょ、どうせ(笑)

A : ビコちゃんがそこまで望むなら教えてあげる。

B : はいはい、お願いします。

A : 花咲爺さんに宝物が埋まっている場所を教えてくれた犬、いたよね?

B : ああ、ポチね。

A : そう。そのポチって“いい犬”でしょ?

B : 見たことないけど、きっと柴犬だよね。

A : だよね。大人しくて、言うことよく聞いて…。
   だけど、ある夜、
   そんな“いい犬”を“取り去って”いったワルーいヤツがいたんだ。
   「羊(ヒツジ)ウマ」…下の名前は確か権三(ゴンゾウ)だったかな?

B : 「羊ウマ権三」? 悪そうな名前だね。

A : 泣いたね、花咲爺さん。
   一日中探し回ったそうだ。

B : ひどいヤツだな、「羊ウマ権三」。

A : 権三は、ポチを抱えて町へと走った。
   毛並みのいい柴犬をお城のバカ殿様が探していることを
   権三は知っていたんだ。

B : 高く売りつけるつもりだったの?

A : そりゃそうさ。
   ポチは、毛並みがいいだけではない。
   地中に埋まった宝物を探し出せる“超能力犬”だ。

B : 噛みついてやりゃいいのに、権三に。

A : 麻の袋に入れられちゃったからね。
   身動きもできなかったらしい。

B : 誰か助けてあげて!

A : 城下町へと続く最後の峠を越えようとしていた権三の視界が、
   突然真っ暗になった。
   何か巨大なものが、権三の前に立ちはだかったんだ。

B : 正義の味方が現れたのね?!

A : そう。ウルトラ牛姉(うしねえ)。

B : 強いの?

A : 強いさ。
   ウルトラ牛姉は、権三の前に、
   歌舞伎役者が“見栄”を切るように
   立ちはだかったんだ。

B : 首と目をグルグルっと回して、
   「そこな悪党、待ちやがれぇ〜!」って感じ?

A : ビコちゃん上手。

B : で、権三はやっつけられたの? ウルトラ牛姉に。

A : あっと言う間だったよ。もう、ペッシャンコ。

B : よかったね。
   ・・・・・・・・終わり?

A : おしまい。

B : ・・・・・・・・? で、何なのこの話?

A : 『いい犬取り去る「羊ウマ」、見栄立つウルトラ牛姉』
   っていうおまじないのイメージはつかめたでしょ?

B : 場面は想像できたよ。

A : OK。そしたら解説するよ。
   ビコちゃん、十二支言えるよね?

B : 子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥(ねーうしとらうー…)。

A : よく言えました。

B : 当たり前じゃん。社会人の常識。

A : じゃ、それを逆から言ってごらん。

B : いーいぬー … とりー … 無理!

A : さっきのおまじないだよ。

B : ???!!!

A : 『いい犬取り去る「羊ウマ」、見栄立つウルトラ牛姉』
   ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
   亥(いい)戌(いぬ)酉(とり)申(さる)未(ひつじ)午(うま)、
   巳(みー)辰(たつ)卯(うー)寅(とら)丑(うし)子(ねえ)

B : あはは。

A : イメージはもう定着しちゃったから、
   あとは2〜3回口慣らしすれば覚えられるよ。

B : おもしろいけど、逆に言えて何の得があるの?

A : 取引先の人なんかと飲みに行ったりするとするよね、

B : ビコは行かないけど。

A : で、その人、自分より少し年上だなって感じるときに、
   なかなか「いくつですか?」って聞きづらいワケ。

B : ふーん。

A : そんなときは、「何どしですか」って聞くんだ。
   そうすると「ひつじだよ」とか、割と抵抗なく答えてくれるのさ。
   そしたら、さっきの逆回しのおまじないを唱える、
   指を折りながらね。
   僕は子年だから、
   亥(いい)→1
   戌(いぬ)→2
   酉(とり)→3
   申(さる)→4
   未(ひつじ)→5
   ほらね? 僕より5歳年上だってわかったでしょ?

B : 目上の人が自分よりいくつ年上なのかを
   知ることができるおまじないだったんだ!

A : 喜んでくれた?

B : うん♪ でも、ビコだったら、「アンタ何才?」って聞くよ(笑)

A : 聞くよねぇ、ビコちゃんなら。


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[3] 文字編
   (2) 正体・斜体・長体・平体<読みやすさ>



A : 皆様、こんにちは。
   「パワー全開! 売れるチラシ制作講座」の時間です。
   このシリーズは毎週水曜日にお届けしております。
   今日は全15回の11回目でございます。
   30代の美人インストラクター、美絵原(ビエハラ)先生です。
   どうぞよろしくお願いします。

B : あ、ど〜うも。よろしくお願いしま〜す。

A : 先週は私、かなり持ちこたえたと思ったんですが、
   最後にやられました。完敗です。

B : 惜しかったですね。私もイクかと思いました。

A : “イク”…。先生、そんなのっけから。

B : スタッフの方、どなたかティッシュお持ちでないですか?

A : 先生、オンエア中にコクわけいきませんよ。

B : そうじゃなくて、鼻血が…。

A : …えー、失礼いたしばした。(←鼻にティッシュ詰めたのでこんな発音に)
   先週から第3章に入っておりばす。
   さて今週のテーバは、何でしょうか。
   (わかりづらいのでここでティッシュを抜き取ります)

B : 正体・斜体・長体・平体<読みやすさ>です。

A : あまり聞きなれない言葉が並んでいます。
   ちょっと早いですが、イッてもいいでしょうか。

B : どなたかティッシュを! それとも私が…。

A : 美絵原先生、そんなに大きなお口をお開けになって。
   ここがスタジオでなければどんなにいいかと…。
   残念ですが、そうじゃありませんって。
   例のお決まりのヤツですよ。
   イキます。

   大丈夫ですかー?!
   一般視聴者の方、ついてきてますかー?!

   今日は少し短めにしときました。
   先生、それはともかく、
   言葉の意味をまず教えてください。

B : 「正体」とは、普通に文字を打ったままの状態を言います。
   「斜体」は、それを斜めに傾けたモノ。
   突風に吹かれて文字の上体がのけぞった感じ…
   と言ったらわかりますか?
   「長体」とは、縦に文字を伸ばした状態。
   そして「平体(ひらたい)」は、横に文字を伸ばした状態。

A : よくわかりました。

B : 斜体ってスピード感があってヨサゲ…
   と勘違いしている方が多いように思います。
   本当にそこは斜体でないとダメなのか、
   よくよく考えてみましょう。
   大見出しの部分なら、
   それなりの意味をこめて斜体を使うのもアリですが…
   それでも斜度は15〜20度に押さえてくださいね…
   中見出しなんかで傾けてしまっては、
   読みにくいだけで効果はゼロ


A : ゼロっすか?
   私はよくやるんですよね。
   普通に置いたんじゃ、バカにされそうで…。

B : 見る人が見ると、「斜体バカ」「長体バカ」「平体バカ」の
   “3バカトリオ”です。

A : 先生、今どき“3バカトリオ”なんて誰も知りませんよ。
   美絵原先生、ホントは結構お歳、行ってるんじゃないですか?
   それ知ってるってことは、昭和41年生まれ…?
   え? 年齢詐称?
   この番組のキャッチフレーズは、
   「40代の美人インストラクター…」としなくては。

B : 漢字とひらがなが織り成す“コロコロ”とした日本語文化では、
   文字づらは正方形が一番読みやすい
ものです。
   可能に限り“正常位”で、…あ、失礼…、“正体”で勝負しましょう。

A : 先生、今私、ドキッとしました。

B : 文の長さの加減で安易に長体にしてしまうことや、
   行数の加減で安易に平体を使うことがありますが、
   それらの場合でも、
   どうやったら正体でイケルかを模索してください

A : その、模索する姿勢が大事なんですね。

B : わかってきたわね、司会者ちゃん。

A : ご、ご褒美。ハヘハヘ…(←犬の呼吸で)

B : 見出し部分なら、ひらがなやカタカナの文字間を操作しましょう。
   日本語の場合、文字間は詰め気味でも、
   行間さえきっちりとっておけば可読性を保てます。
   文字間を操作する場合は、
   1文字ごとに%設定を変えることもいとわないように。
   文字を“図形”だと認識して、
   線と線のアキの具合を調節してください。

A : 美絵原先生のお話を聞いておりますと、
   諸悪の根源は“めんどくさい気持ち”のように思いますね。

B : 司会者ちゃん、今日冴えてる。
   わかったわ。ご褒美あげちゃう。
   その前にお仕事最後まで仕上げなきゃ。

A : あのー、先生! いえあのー、作者の先生!
   いい感じに書いてくださいよー。

作者 : アホか。誰がおまえのために…。
     …美絵原先生、私とではいかがでしょうか?

B : 視聴者の皆様。
   私が“正常位”に、…でなく“正体”にこだわるのは、
   視線の流れにとっての抵抗をできるだけ排除するんだ
   という基本姿勢にもとづくものです。
   そもそも斜体・長体・平体は、
   「版面外し」や「文字ブロックの傾け」と同じく、
   基本が備わった上で初めて効果が発揮できる
   「崩す」テクニックのひとつです。
   やりすぎないように、やりすぎないように、やりすぎないように…。

作者 : ええか、司会者。
     美絵原先生は“正常位”にこだわっておられる。
     おまえが好きな変態ワザは、
     基本が備わってないヤツはやっちゃアカンと。
     …美絵原先生、今そちらに伺いますよって。


・・・・ * ・・・・ * ・・・・ * ・・・・


作者 : ちゃんと磨いてコ。におうかな。大丈夫や。


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はい、作者より先に“そちら”へ行こうとした方、
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どうもありがとうございます。

 
A : オレはMarcyだ!
   酒と煙草と海と女をこよなく愛する
   高濃度フェロモン垂れ流しの辛口ブロガーさ。

   オレの夢を教えてやろうか。
   “インターネットハーレム”をつくることさ。
   オレに夢中になってるお嬢さんたちだけのな。

   「言葉ひと振り☆ 硝子の切っ先☆」
   この研ぎ澄まされたフレーズに
   トローリ糸を引くヤツだけでいいんだ。

   「Marcyさんのって、どんな形?」なーんて書いてくる
   ちょっとオツムの弱い人が特に好み。
   だーって、オレ論理的な会話できないモン。

   そうは見えねぇって?
   毎回言わせるなよ。
   トップの写真はオレの飲み友達だってば。

   なんたって、中学の頃、
   オレは国語サボってたからな。
   国語の先コウの口が臭くってさ。

   「オレのブログに男連中は入って来るな!」
   というのが本音だけど、
   そんなことおくびにも出さないよ。

   男どうしのクールっぽい会話も時々見せておくのさ。
   気が向いたら論争につきあってもいいぜ。
   ホントは飲み友達に助けてもらうんだけどね。

   別にいいだろ? 友達はそのためにあるんだ。
   1回おごってやれば、それでチャラよ。
   アイツは喜んで書いてくれるよ。

   ハッピーな世界だぜ。
   この世界にいてオレのこと知らないと
   モグリって言われるから気をつけろ。

   それじゃあ、
   今日もこの「独白ブログ」に来てくれた
   キミにだけこっそり教えてあげる。内緒だよ…

   ここだけの話、
   ≪目の前にお婆さんが立ったら寝たふりをする≫
   切れ味スゴイだろ? だーってオレはMarcyだぜ。ハハハハ。あ〜あ。

B : このお話はフィクションです。


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何だかやたら爽快感を感じた方、
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ありがとうございました。

 
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<日常博多弁講座 (8)>「と」+「や」の音便形「ッチャ」

A : みなさん、こんばんは。
   転勤族の奥様方をお迎えしてお届けしております、
   「日常博多弁講座」の時間です。
   今日も、相変わらずお美しい奥様Bさんにお越しいただきました。

B : どうぞよろしくお願いします。

A : 先週に引き続き、
   奥様方の情報交換の場“井戸端会議”の風景です。
   では早速、会話のシーンを聞いてみましょう。

--------------

井戸端A : 302号室の××さんのご主人、
        6月から北京に単身赴任ゲナ(単身赴任だそうよ)

井戸端B : 奥さんついて行かんとね(ついて行かないのかな)

井戸端A : 北京やケンね(北京だからね)
        行かんっチャないと(行かないんじゃないかな)

井戸端B : そうよねェ。
        トイレやら、
        知らん人と並んでせんといかんっチャロ?
        (並んでしないといけないんでしょ?)
        北京って。

井戸端A : そんなのウチしきら〜ん(そんなの私できな〜い)

井戸端B : 穴からウンのモリモリ出るところ、
        何で人に見せられるっチャろうか(何で人に見せられるんだろう)
        あっちの人は。

井戸端A : オリンピックがあるケン(オリンピックがあるから)
        だいぶトイレもましになったっチャないかね(なったんじゃないかな)

井戸端B : なら、奥さんもついていったらいいトイ(いいのに)

井戸端A : 行かんメエや(行かないだろうね)、それでも。
        あの奥さん、男好きやモン。

井戸端B : 何かおもしろそうなネタ、またどっかで仕入れてきたね?
        誰にも言わんケン(誰にも言わないから)
        早うしゃべらんね。

--------------

A : 今日はシーンの中で気になる言葉などありましたか。

B : 「穴からウンのモリモリ出る」って、ものすごいリアルだなって…。

A : ええ、それは博多弁とは全く関係ありません。
   でもそこに食いついてきたということは、
   相当お好きですね、この手のお話が。

B : いえいえ「気になる言葉」って言うから…。

A : いいんです、いいんです。
   奥さん素敵だ。開けっぴろげで。

B : あ、もうひとつ「気になる言葉」あります。
   “言葉”っていうか“音”なんですけど…。

A : “音”ですか。

B : はい、「チャ」っていう音です。

A : 奥さん、鋭い!
   「チャ」という音、これは福岡の言葉の特徴なんです。
   上のスキットの中、実に4回も出てきてます。

B : なんなんですか、この「チャ」って。

A : ではご説明いたします。
   「チャ」は「と」と「や」がくっついたものです。
   以前“断定と疑問の終助詞「と」”は勉強しましたね。
   その「と」と“疑問や強意の終助詞「や」”がくっついて、
   「トヤ」→「ツヤ」→「チャ」となったワケです。

B : ああ、なるほど。核になっていたのは「と」だったんですね。
   英語の
   What is your name? 「ホワットイズユアネイム」
   →What's your name? 「ホワッツユアネイム」
   →What's ya name? 「ホワッチャネイム」
   となるのとよく似ていますね。

A : さすが奥さん、学がおありになる!
   でもひとつ注意することがあります。
   「チャ」と発音する場合は、
   「チャ」の直前につまる音「っ」を入れるのが普通です。
   「と」+「や」は、促音「っ」を入れて「ッチャ」となる
   というのが正しい理解なのです。

B : よくわかりました。

A : それでは最後に、
   私に続いて言ってみましょう。
   「行かんっチャないと?」

B : 「行かんっチャないと?」

A : 「夜ひとりやケン寂しかっチャンはーと

B : 「夜ひとりやケン寂しかっチャンはーと

A : 「人妻、好(す)いとっチャロ?はーとはーと

B : 「人妻、好(す)いとっチャロ?はーとはーと

A : はい、ありがとうございます。
   今日は「と」+「や」の音便形「ッチャ」について勉強しました。
   ではまた来週のこの時間、お会いしましょう。
   See you next week!

B : ンチャ!


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はい、博多弁って国際的なんだなって思った方、
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この“ドリム先生シリーズ”は、
精神分析医を気取るドリム先生が
ユング心理学の「夢解釈」の手法にのっとって
被験者の夢を分析するものです。
実を申しますとドリム先生はズブの素人でございます。
本職の精神分析医の方がご覧になると、
稚拙の極みに映るやもしれません。
しかし、ここは短編ストーリーの世界。
少々お目こぼしいただければ幸いです。

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A : ドリム先生、自分の夢の中に出てきた人に
   恋してしまったようなのです。

B : お若いですね。

A : まさに理想の人で。

B : 胸がキューンとくる感じありますか?

A : あります、あります。

B : それは間違いなく恋ですね。
   私もがんばらなければ。
   …あ、いえ、こちらの話で…。
   お聞きいたしましょう。
   少しイスを倒してラクな姿勢になりましょうか。

---- * ---- * ---- * ---- * ----

A : 彼らは潜水艦に乗っていた。
   敵軍を不意打ちするため、
   夜間をねらって進攻しているのだ。
   眠いのは敵軍だけじゃない。
   通信システムを担当する通信員の人たちも疲れきって眠っている。

   彼らは皆ウグイス色の作業服を着て、
   頭にはどういうわけか、笠の内側に数個の白熱球がついた
   クラゲ形のヘルメットをかぶっているのだった。
   起きている間は頭の電球をともし、
   その明かりで手元のデータを解読するのだ。
   笠は他の人がまぶしくないようにという配慮で、
   電球は笠の内側にのみその明かりを広げた。
   だから電球を点けている人は電気クラゲのように見えるのだった。

   通信員の人が眠るときは、
   電気代を節約するためか、
   あるいは眠っていることを周りに知らせるためか、
   白熱球は消さなければならないことになっていた。

   この潜水艦には7〜8人の通信員が乗っていたが、
   今この時間はその全員が眠っていた。
   そのうち一人は女性だった。
   彼女は隣の男にもたれかかるようにして眠っている。
   彼女は自分の電球を消すことも忘れたようで、
   暗闇に彼女一人がポッカリと浮かんでいる形となっていた。

   見回りに来たのは女神様だった。
   透き通るような白いドレス。
   ダイヤモンドが上品に散りばめられたティアラ。
   先端がオレンジ色に輝く魔法のタクトを手にしていた。
   女神様はたいへん慈悲深いお方で、
   疲れてこんこんと眠る彼女の様子を見て、
   くっくっと微笑まれ、
   「しょうがない子ね」
   と言って、彼女の頭のボッチをひねって電気を消した。

---- * ---- * ---- * ---- * ----

B : ええと、あなたが恋をしたのは、
   女性の通信員ですか、それとも…

A : 女神様ですよ。

B : ああ、お歳を召した方が好みで…。

A : いえいえ、フルートのような落ち着いた声で、
   悪戯っ子のようなまなざしで、
   雰囲気がマシュマロのようでした。

B : 最後のところが可愛らしいですもんね。

A : そうでしょ?
   私もボッチをひねって電気を消してほしいと思いました。

B : どこかにボッチがついてますか。

A : このあたりに。

B : …ええ、心の内側からのメッセージは、
   男性の場合“女性”の像として人格化されます。
   我々精神分析医はそれを“アニマ”と呼んでいます。
   “アニマ”にはいくつかの段階があります。
   その時々に現れるアニマと真剣に対峙(たいじ)していくことで、
   人の心はより豊かなものへと熟成していくのです。

   第一の段階は「生物的アニマ」で、
   性的なイメージの強いものです。
   母親から決別するために必要なイメージです。
   第二の段階は「恋愛のアニマ」。
   ひとりの女性に対する愛を育て、
   これから築く家庭を強固なものにするために必要なイメージです。

   実生活では、家庭を持ってしまうと
   あとは仕事と趣味とテレビとビールがあればいいようなものですが、
   実際にはその後もアニマは登場し続けます。
   自分は人よりスケベだからというワケではありません。
   あなたの無意識は、密かに「叡智(えいち)」を目指してひた走ります。

   お仕事、きっとうまくいってらっしゃると思います。

A : ええ、まあ、順調ですかね。

B : 部下の方たちの協力あってのことでは?

A : 十分わかっているつもりです。

B : 能率や効率に重きを置きすぎていませんか?

A : 仕事ですから仕方ないでしょ。

B : 部下の方も相当疲れているのでは?

A : 今がふんばり時なので、それも仕方ないと…。
   あっ、「潜水艦の通信員」は私の部下でしたか。

B : 「ボッチをひねって電気を消してくれた」のは誰でしょうか。

A : …「私」ですか。
   私は「私」に恋したのですか?

B : 夢の中に登場するのはすべてあなたの分身だと言ったはずです。
   今後あなたが歩くべき道筋を、
   あなたは見つけたのだと思います。
   その“AHA体験”こそ“恋”なのではないでしょうか。

A : 先生、いつもながら感心しちゃいますね。

B : 私も恋をしてみようかな、今晩あたり。
   みなさんが夢を語る生き生きした表情を見ると、
   私はこの仕事を選んでホントによかったなと思うんですよ。


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